基本、動物達は旅行などでは建物の室内に連れて行けないので、先住わんこの「えりな」ちゃんはいつも木陰の車の中でねんねしてもらっているのですが、その為に気を使って、パパは朝早くからお散歩に連れ出したり、寸暇を惜しんで彼女(えりな)の御世話でおおわらわ。
この子が我が家にやってきたのは、東京の杉並から千葉県我孫子市に新しく家を建てて引っ越しをして間もなくの昭和50年のこと。
新築の家がまだまばらに建っている新興団地の道路に、よちよちと白い毬のようなわんこがが歩いている・・・と騒いでいる子供達に気が付き外に出てみると、見つけました! 妖精の様な白いかたまりが、よろよろと不安そうに歩いている姿を・・・!
ご近所さんや子供達の話によると、近くの利根川沿いの小さな道具小屋の中で産まれた3匹の中の一匹らしい。
一匹はちょっと離れた別の団地に早々と引き取られ、もう一匹は、我が家の斜め後ろの家に飼われることになったらしい・・・と。
兄弟が居なくなったその子達を探しにお母さんが小屋を離れた隙に、一人取り残されて寂しくなって外に出てきてしまったらしいこの子は、チビにしてはビックリするほどの道のりを寂しさに震えながら、いなくなったママの後を追って団地を目指して歩きだしたらしい。
その仔犬を見守って一緒に歩くご近所の子供達がワイワイとはしゃぐ足元で、戸惑いながらも躓きよろめいている姿。
もう、そのよちよち歩くけなげな姿を見ただけで、一瞬にして我が家で飼う事に決定!
藁のような匂いがする小さな仔を抱き上げると、もう、私の胸の中は感動で一杯になっていました。
これからは、私がお母さんよ!
その子犬のお母さんが我が家にやってきたのはそのすぐ後・・・。
近所の子供達に囲まれながら、導かれるように我が子を見つけて玄関の中まで入って来たお母さんは、私に抱かれたチビを見上げながら、早く私のところに帰っていらっしゃい!というように小さく「ワン!」と啼き、前足を立ちあげたり、くるくる回ったり、やさしい目で促しているようでした。
興味津々のご近所のお子さん達4~5人に囲まれ、我が家の玄関にまで入って子供を迎えに来たこのお母さんは、少し茶色がかった綺麗な毛並みの犬で、みんなと一緒に玄関の中まで入って来たということは、子供が心配だったということもあったのでしょうが、多分、何処かで飼われていた経験がある犬では・・・?と思いました。
その時、誰からともなく、「♪ お~かあさん!おかあさん! ♪♪」という囃子言葉が出てきて、その子供達の興奮したうれしそうな囃子言葉の真ん中に座りこんだお母さんの目は、私達のこどもになることを許してくれたような気がしたものでした。
あの、「♪ お~かあさん!おかあさん! ♪♪」 の囃子が、今でも胸に鳴り響いています。
ご近所の誰かは知らないこのお子さん達の優しさが、安堵をお母さんに与えてくれたと信じています。
その後のお母さんの「我が子達への愛」の行為や、思いを、しっかりと書き留めておきましょう。
それと、お母さんのその後の悲しい結末も・・・。
今でも「♪ お~かあさん!おかあさん! ♪♪」の合唱とともに、あの時、お母さんも一緒に飼ってあげれば良かったのに・・・という後悔で胸が一杯になる出来事が待っていたのです。
(つづく)