MEMEの日々のことども

日々の星屑を拾って書き残そう・・、そんな「85歳」。  HP「素材の小路」「MEMEのベランダ」(裸婦デッサン等)「MEMEの便箋」「ドレスの小路」「けいの部屋」など。

車中ウォッチング【私は嘘を言ってません!】

★ 電車の、とある駅から乗ってきた女性が、入り口近くに座る私の前に立った。
背を丸め、いかにも疲れ果てたような吐息を吐くさまは、私と同じかちょっと上の年齢の方だろうと推察したが、とても疲れた様子だったので、席を譲った方が良いかな・・?と一瞬迷った。
・・と、ふと左を見た彼女が突然動きだした!
 つつつつ〜!
足・腰もすっきり伸びて、立っている人を華麗に避けながら、軽やかに左の方に移動するさまは、先ほどの疲れ果てた老人とはとても思えない見事な身の捌き方! (+o+)


おやおや・・と目で追った私。
・・・ざんねん!
そのすばやい華麗な動きは、見つけた左の「空き席」をめがけての行動だったようなのに、一瞬の誤差で先客にゲットされた模様・・・。
「う=、残念!」という感じで膝を折り、ガクッと首を反らせた姿が遠くで見えた瞬間、他の男性と重なって、それきり私の視覚から消えた。


先日、「スケートの選手になった気分」だけで腰痛になってしまった、間抜けな私。
同じ位の年齢の女性に「お席を譲ろうとした」行為を自分で笑った!!
もう!  自分では彼女より「若い」つもりなんだからぁ・・・!  ^m^


★ーーーーーーーーーー★

さて・・

★ 次の駅から乗ってきたお洒落なおばあさん。
この方はどう見ても私よりお年を召していらっしゃる・・・。
黒のコートに黒のスカート(ズボンじゃない!)、黒のストッキングにヒールのある(!)靴。
髪を美しく結い上げて、上品さが漂う。
よろりとバーに縋った様子に、前に座っていた若者がすっと立ち上がり席を譲る。
「あら!ありがとうございます。助かります。どうもありがとうございます・・・」と何回もお辞儀をしながら席に座るさまも、美しい。

キリリと口角を結び、弓のような眉も「良いとこのおばあさん」風情。
若者よ! 席を譲ってくれてありがとう・・・。
先ほどのこともあり、私もちょっとほっとした。


程なく、何処からか「私は嘘は言っておりません!嘘ではありません! 本当に嘘は言っておりません! 誰にお聞きになってもいいです。 嘘は言ってません!!! 」ときっぱりした大きな声がし、周りがシーンとしている。

びっくりしてそちらに目をやると、その主は例の「良いとこ風のおばあさん」。

赤い携帯をしっかと握り、きりりとしゃべっている。
「私は嘘は言いません」を数回繰り返して・・・。

電話していると、思わず大きな声を出していることに気が付かないのか、そのイメージからはとても考えられない力強い内容の「反撃」を繰り返し。

電話を終わり、何事もなかったように携帯をバッグにしまうと、代わりにバッグの中をごそごそと手探りして取り出したのが、「メンソレータム」の丸い缶。
そう、直径4cm程の、看護婦さんが印刷されている・・・。懐かしい〜!(^o^)

先ほどの「力強い反撃」のセリフにシーンとしていた周囲もほっと息をゆるめた感じ。

ご本人は澄ました顔で何も無かった様子で蓋を開け、少しすくって左手に載せ、それを右手で目の周りに丁寧にくるくると摺り込んでいる・・・。

周りにさわやかなス〜っとした香りが漂う。

えっ・・? 目・目にぃ〜?・・・すかすかしないのぉ〜〜!?  (@_@;)

残りを唇と額に丁寧にすりすり、 ついでに手に揉み込んで終わり。

普通、顔に塗るなら「桃の花」でしょうが・・・。( 古!)



そして、日暮里で乗り換えエスカレーターに向かう彼女の颯爽とした威勢の良い歩き方は、やはり気丈な「嘘は言ってません!」のセリフが似合うおばあさんだった!

誰にも負けない速さでエスカレーターにすすっと跳び乗り、遥かかなたの高さへと登っていく後姿を見て思った。

「日本の老人(女性)は、健在なり!」

それにしても、何の「嘘」を否定し続けたのだろう・・・。  【謎】だなぁ・・・





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