MEMEの日々のことども

日々の星屑を拾って書き残そう・・、そんな「85歳」。  HP「素材の小路」「MEMEのベランダ」(裸婦デッサン等)「MEMEの便箋」「ドレスの小路」「けいの部屋」など。

けいとう


枯れた花や実が秋を忍ばせている中、「けいとう」の花だけが美しい花色を魅せてくれる。
手賀沼の水面の小さな漣も、夏の終わりを告げているよう・・・。



この「けいとう」の花を見る度に、あの日の父のことを思い出す。

あの日・・とは、私と家人のささやかな結納の日。


朝から父が「掛け軸」を引っ張り出して縁起の良い絵柄を選び始めたがなかなか決まらず、熟慮の末に選んだのが「けいとう」の絵柄。
落ち着いた赤い色の「けいとう」が右下から二本すっと伸びて、中央で仲良くいたわりあうように寄り添っているもの。
父の親心があったかく沁みるような掛け軸だった。


何か行事がある日には、ここぞとばかりにその日に合わせた掛け軸を選び始めるのが父のいつもの慣習。
そんな日は、部屋を整えたり、お料理に取り掛かったり・・と、母にとっては大忙しの日であったので、暢気に(見える)掛け軸を吟味して選び出している父は顰蹙の的。
「前もって準備しておけばいいでしょうに・・」との言葉に、「今日の気分で選びたいのだ」と譲らぬ父。


そんな忙しくも慌しい「特別の日」は始まるのだった。


胸にジーンと来るこの思いを今また思い出している。