今日3月14日は、今年の桜の開花宣言の日。
美しくも儚げな花びらが11輪咲いた・・・ということで・・・。
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昨日の大江健三郎氏のご逝去の報には心が刺さった。
あれは随分前の事だったけれど、一度、音楽会場で目の前のお席でご一家様のお姿を拝見した経験があり、その時のご子息に対する氏の細やかな心配りに心打たれ、忘れられない思い出が今も胸に熱く残っているのだ。
氏のご子息は、身体に少し不自由な事をお持ちだけれど、それにも増して「音楽」に対する才能が秀でていらっしゃることは周知の事。
彼の作曲のやさしい旋律の素敵な作品を、小林美恵さんがヴァイオリンの美しい旋律で表現する・・・というコラボの舞台が催され、共演する彼女がお召しのドレスを私が担当させて頂いたことから音楽会にご招待頂いた・・・というもの。
その時、ご招待頂いたお席が氏のご一家のすぐ後ろだったことから、舞台に出る前のご子息への優しい細かい心使いの数々の所作を目の前で拝見して心に強く残っているのだ。
きっちりとスーツに身を固めた緊張気味の「光さん」。
小林美恵さんの独奏が数曲続き、いよいよ「光さん」の作曲のヴァイオリンでのご披露となり、ご子息も舞台に立つ時が来た時、心配そうに、だけど嬉しそうに、襟を正したりネクタイを直したり、彼の身の周りの点検をいそいそとなさる大江健三郎氏のやさしい一人のパパになっているお姿を拝見した時、とてつもなく素敵だと思った。
いざ!その時が来て、座席から二人で立ち、舞台までお父様がそそと付き添っていらしたお姿は、暗い会場な筈なのにそこだけ慈愛に満ちてほのぼのと温かい光が指していたような気がした。
奥様のご親戚の「伊丹十三さんご夫妻」もご一家で睦まじくお出でになっていて、目の前で拝見し、「光さん」を囲んだご一族の愛にほのぼのした気持ちになったものだった。
その件があって以来、「大江健三郎」氏の作品を手に取ったことがありながら、難しくて「齧った」だけの感じで終わってしまったのが悔やまれる。
これからでも遅くはない!
頑張ってお作品を読んでみることにしよう。
あの舞台では、ご子息様の舞台姿にのみ目が行って、私が作成したヴァイオリニストのドレスなど多分お記憶に残っていらっしゃらないでしょうが、兎に角も、あの赤いドレスをご覧下さったことだけは確かな事。
それだけでも嬉しく、誇りに思う。
ノーベル文学賞に輝く氏の、父親としてのあの美しい細やかな心使いを垣間見たあの瞬間は、私の宝になった。
ご冥福をお祈りします。
伊丹万作(岳父) 伊丹十三(義兄) |