MEMEの日々のことども

日々の星屑を拾って書き残そう・・、そんな「85歳」。  HP「素材の小路」「MEMEのベランダ」(裸婦デッサン等)「MEMEの便箋」「ドレスの小路」「けいの部屋」など。

退院から二週間

昨日は、退院から二週間めの診察日。
家人の車で送って貰い、ルリちゃんも付き添って来てくれた。


先生もびっくりするほどの回復度で、今まで「症状成績簿」のような表には全部○(症状があると○)が書かれていたのに、今回は7項目に「△」とか「×」が書かれていた。
つまり、それだけ症状が軽減しているということ。



正直、先生も「最重度の症状だったから回復しないかも・・」と思っていらした様子がありありと見てとれた。
「ここまで回復したなら大丈夫ですね・・。後は辛抱強く待つことですね」と・・。


やれやれ・・。



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入院時に同室だった方に会いに5階へ足を延ばす。
骨折で2か月も入院していたHさんは数日前に退院なさっていたが、もう御一方のSさんはまだ点滴をしながら同じベッドに伏していらした。



Sさんのことはまた後日書きたいのだけれど、人ってこんなに辛抱強く美しく生きられるのか・・と感動を覚えずにはいられないお方。



20才前後に婦人科系のガンの手術をし、それもあって独身を通して只今46歳・・。
美しい声でどんな話題にでもとんとんと返して下さる明るいお人柄からは、微塵も暗さを感じられない。
心電図の電波の関係で私と同室のナースステーションに近いベッドに引っ越していらした当時、ず〜〜っと点滴に縛られているにも関わらずお元気なご様子なので、恐る恐る「どうなさったのですか?」とお聞きしたことだった。
「20歳前後のガンの手術の後、今まで無事にきたのですが、3月に胃のガンが見付かって開腹手術をしたら、ガンが腹部に広がっていたので、そのまま閉じたのですよ。
ここ最近、腹水が溜まって来たのでそれを取る為に入院しているのです」とのこと。



体力を付けてから二回目の抗がん剤を実行する予定なのだけれど、腹水は溜まる一方で、口からの食事が嘔吐で出来ない状態なので点滴や輸血などで全ての栄養を補っているけれど、体温は34度前後、血圧も最高70位・・と、最低の体調だった。
そんな彼女と
二週間ぶりにお会いしたら、「あれからずっと体調が悪く、結局二回目の抗がん剤は諦めなくてはいけないみたい・・・」と、美しく澄み切ったお顔でおっしゃる・・・。


実際、経口での食事が出来ないということは、ず〜っと病院の点滴に縛られ続けるということで、先の事を考えたら、気が遠くなるようなトンネルの中に一人取り残されたような心境でいらっしゃるでしょう・・・。
深夜、カーテンの向こうで嘔吐の気配がし、ひとしきり苦しんだ様子の後、静かになった病室の隅から鼻をすする音がかすかに聞こえて来た時もあった。



そんな彼女を二週間ぶりに見舞った時、生死に関わる病気でなかった私が訪問するのも憚られるような病状でいらっしゃるのに、にこにこと「うれしいわ〜!」と握手を求めて下さった。



「早く元気を取り戻して下さいね」という私に、「良くなるということはもう望めないけど、せめてもう一度家に帰りたいから、頑張るわ・・・」と。



彼女が言うと、それが全然湿っぽくないのが素晴らしい。
こんな状況になってもなお、美しく、静かに、澄み切った心で病気に挑んでいらっしゃるSさまと握手をしながら、危うくほろりとしそうになって慌てた。
決して愚痴もおっしゃらず、大きな決意で先の事を考えていらっしゃるご様子の崇高なまでの意志の強さにたじろぐばかり。


素晴らしい方に巡り合ったことを感謝しよう。
そして、近いうちにお手紙を書こう。
今の彼女には、心を添えて差し上げるしか出来ない私。