MEMEの日々のことども

日々の星屑を拾って書き残そう・・、そんな「85歳」。  HP「素材の小路」「MEMEのベランダ」(裸婦デッサン等)「MEMEの便箋」「ドレスの小路」「けいの部屋」など。

昨日の続き・・・

先日見たテレビでの一シーン・・・。

 

熊に畑を荒らされて困り果てて取った手段・「檻」に、見事に嵌まってしまった熊の映像だった。

確か、NHKのニュースだったと思う。

 

鉄で編まれた小さな檻に座り込んだ黒い塊・・熊だった。

その熊が振り返った時、身体が震えた。

真っ赤な口がクローズアップされると、何と!右の下の一番強い筈の犬歯(?)がポッキリ折れ、今にもこぼれ落ちそう。

それが、口周辺の赤い血液の中で純白に輝いているのが一層胸にグサリとくる。

 

身動きすら不自由そうなその檻の中で、そこに至るまでの時間をどのような思いで逃げ惑ったのか・・。

美味しそうな餌(多分、芋かトウモロコシか)を見つけてわくわくと踏み込んだお腹っぺらしの若い彼が気が付いた時には、既に囚われの身。

 

それに気づいた彼が取った行動は、鉄の柱を食いちぎるか、体当たりするしかなかっただろう・・・。

 

どれだけの時間その恐怖と戦ったのだろうか・・・。

 

目の先にある筈の「お芋」や「トウモロコシ」は勿論彼の口には入らなかっただろう。

そして、弾丸のように暴れ、鉄柱を齧り、体力の限界まで一匹で戦ったあとの映像だったのだろう、疲れ果て、諦め果て、黒い瞳には絶望が滲んで・・・。

 

いっそ、集まった周囲の人間に「咆哮」したり襲い掛かったりしていたらこんなに胸が痛くは感じなかったのだと思うが、檻の小さなスペースにぺたんと座り込んでハーハーと息をするだけの、絶望の彼。

闘うだけ闘い、体当たりして逃げ場を探し、何とかしなくてはと鉄柱を齧り、疲れ果てた末の静寂・・・。

 

その一瞬の映像が、音を立てて私の胸に刺さってしまったのだ。

 

農家の獣害の現状も理解している。

こういう手段で畑を守る行為も理解している。

だから、これを書くことで「非難」している積りはない。

本当に、本当に、全てを分かっている。

 

だけど、

「せめて最後の【檻の中の芋】を食べてから捉えられたらよかったね・・・」

「どうせ捉えられるのなら、不安と恐怖の地獄の時間が短かかったら良かったね」

「折れた歯が綺麗な真っ白な歯だったから、まだ若い子だったのね」

「きっと、【俺、お腹が空いていたいただけなんだけど、何か悪いことした?】

と思っていただろうな・・・」

 

いろいろいろいろ・・・、カメラにアップされた彼の諦め切った黒い目が思い出されて、私の頭に突き刺さっていたこの数日。

 

少しその残像が薄れかけたかな・・? と思った昨日、手にした美味しそうなお芋・・・。

 

思わずぽろぽろと涙が流れ、お芋をてにしたまま嗚咽していた。

 

 

本当に、大人げない・・!ということは百も承知している。

本当に、仕方ないことなのだということも納得している。

こんなことを書いている私だって、平気で「肉食」を当たり前にしている。

部屋に走る「Gさま」(ごき)には大騒ぎして「シュー」も平気でする。

 

だから、誰も悪いのではない・・・。

全部仕方ないことなのだ。

 

でも、でも・・、あの子に「お芋」を食べさせてあげたかった・・・。

 

歯がポッキリ根元から折れるほど檻と戦った絶望の時間を短くしてあげたかった・・・。

 

私の「エンディングノート」に、近いうちに一言書き添えよう。

「苦悩と絶望の時間はなるべく短く済むように・・、手当てをお願い」

そして、食いしん坊な私が望んだら、おなか一杯にして送ってね・・・と。

 

 

昨日の「お芋」から、とんでもない方向に走りだした私の「ことども」。

一体、何を書こうとしていたのか・・?と、今となっては少し恥ずかしさが襲う。

 

決して「センチメンタル」な気持ちだけでは無いことを分かって下さいね。

それだけが心配。

 

たった・・・、たったそれだけのことを、こんなに書き連ねてしまったが、

私にとっては、とても大事な出来事だったのはどうにも仕方ない。

 

ただ、こうして書いて履きだしてみたことで、今夜からは眠れるかもしれない・・・。