MEMEの日々のことども

日々の星屑を拾って書き残そう・・、そんな「85歳」。  HP「素材の小路」「MEMEのベランダ」(裸婦デッサン等)「MEMEの便箋」「ドレスの小路」「けいの部屋」など。

星になったレトちゃん (つづき)


もう・・・、いや、まだ二年しか経っていないのか・・・?
レトちゃんが逝ってから、もう二年の年月が流れたことが嘘のよう・・・。
現に、レトちゃんのぬくもりがまだこの手に残っている。
頭を撫でると、ほっこりむっくりオデコがまん丸だった感触も・・・。



優しい目で、私の全てを包み込んでくれた。
12年という歳月を、ずっと私の傍で過ごしてくれた・・。


彼女の12年の命は、清く、美しく、温かく、優雅なたたずまいに彩られた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その最後の瞬間を、感謝と感動で看取れたことは、本当に感慨深いものであった。


昨日の続きを書こう。



歩けない筈のレトちゃんが、私達のベッドルームにやってきた・・・。
ほとほとほ・・、ゆっくり歩く肉球の音にびっくりして飛び起き、入り口を見た私。
夜中の暗い部屋で唯一つきらびやかな光を放つテレビの光を反射させて、そこにレトちゃんの目があった!

「??????」状況を飲み込めないでいる私と目を合わせたまま、その目で私をいざなうように振り向きながら先導するように部屋を出ようとする彼女の姿。
しかし、直ぐに力尽きて崩れ落ちる。
一体これはどうしたの???何が起こったの???・・と、我が目を疑いながらもベッドから飛び降り抱きしめて落ち着かせる。
「ごめんね、さびしかったのね・・・」


しかし、またよろよろと立ち上がり、荒い息をしながらも部屋を出ようとする。
「どうしたの?大丈夫?」と、仰天の行動にただただおろおろする私。
崩れながらも立ち上がり、その「決意」に満ちた行動に、私は制止するのも忘れ、ただ彼女の身体を支えてあげるしか成す術が無かった。
そのレトが向かった場所は・・・!
信じられないことだけれど、バリアフリーのバスルーム。
今までシャワーを浴びることはあったけれど、常には行かない場所だったし、タイルが冷たいから・・・と、方向転換をさせようとする私に、どこにそんな力が残っているのかと思うほどに身をよじって、数メートル歩いてバスルームに着くと、計算していたかのように洗い場に横たわった・・・・。



ここまで書いて、あの瞬間を思い出すと、もう先が書けないような気がする・・・。
胸の奥で、嗚咽がやまびこのように鳴り響く・・・。


でも、いつかは書きとめておこうと思っていた事。
このチャンスを逃したら、きっと書くことを恐れ、この神々しいレトの終焉を封印してしまうだろうと思い、心を奮い立たせて続きを書こう・・・。



両手両足を横にして横たわり、「やっと着いた」という安堵の雰囲気が彼女の身体から漂う。
私は・・といえば、突然のレトちゃんの不思議な行動に、ただただ「どうしたの?! お部屋に行きましょう!」と声をかけながら、おろおろと身体を支えていただけ・・・。
思考能力「ゼロ」!
これから何が始まるか・・・? ・・・・・・・その時、やっともしかして!と思った。



丁度その頃、ベッドルームのテレビでは、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」を、世界三大オペラ歌手の一人地元イタリアのパバロッテイが謳いあげ、荒川静香さんが優雅に舞っていた筈。



ビニールタイルが冷たいだろうから部屋に移してあげようと、レトの身体を抱上げようとすると、静かに目を開き、「このままで・・・」と無言で訴える。
仰天している私は、まだ何が起こっているか知らない家人に向かって大声で叫んだ!
「おじいちゃん! レトが変だから直ぐに来て!!」
びっくりして飛んできた家人も、青ざめて無言のまま立ちすくむ。


それから何分経っただろう・・・。
事情をやっと理解出来た私は、上から夢中で抱きしめて、頑張ってね!ママが傍にいるからね・・・と声をかけるしか出来なかった。


家人が「ちょっと・・」と用足しでその場を離れそうになった瞬間、「待って! 今が大事な瞬間だから、傍を離れないで!」と私は叫んでいた。


その声に刺激されたのか、身動きひとつしなかったレトがそっと首を上げ、私と家人の顔を見上げると、そのまま静かに首を垂れ、大きな息をひとつ吸って・・・。


最後の最後、首を上げて私達を見たレトちゃん・・・・・。


美しすぎる最後に、私達は言葉も無かった・・・・。



やっと書けた。
きっともっともっといろいろ書かなければいけないことがあると思う。
でも、それはまたいつか・・にしよう。



★ 私を迎えにきてくれ、目でいざなってくれた感動!
★ 自分で「最後の場所」を決めていたとしか思えない揺ぎない行動。
★ 「ろうそくが燃え尽きる時、」の諺通り、私たちを迎えにくることが出来た驚き。
★ 自分の最後の時間を知っていた驚き。
★ 最後の事後の始末(経験しないと理解できないかも)に最適な場所に身を横たえた驚き。




もう、何も言えない程の感動を二人に与えて、彼女はお星様になった。
「誰もねてはならない」の朗々たる歌声とともに・・・。


今年のフィギアーNHK杯の解説をしていらした「荒川静香」さんのお声を聞いていて、今だ!今しか書けないぞ・・・と思い、私たちの天使「レトちゃん」の記録を書いてみた。





-