当時、12歳になっていたレトちゃんの食欲が無くなり、40kgの体重の彼女を移動させるにも手製の「ハンモック」で吊り上げて・・という状態だったので、常に彼女の動静が気になっていた頃だった。
「ハムを2枚食べた!!」とか、「餡だと何とか食べるよ・・・」とか、家人との会話はレトのことばかりだったが、それでもそこそこ食べてくれていた。
そこ数日玄関ホールで寝るようになっていて、そこが気に入っているようだから・・と、敢えてベッドの傍に連れてこない日があった。
その日も、そうだった・・・・。
ところが、ベッドルームでテレビを見ていると、「とことこ」と小さな足音が聞こえたような気がして、家人と「?」と目を合わせた。
レトちゃんは一人では歩けない筈・・・・・・。
はっと入り口の方を見ると、私達の方を見ながらゆらゆらとレトちゃんが立っている・・・・。
きらびやかなテレビの光で、彼女の目がきらきら光って・・・。
「どうしたの?!」とベッドから飛び降りて駆け寄った私。
「ごめんね、寂しかったのね・・」
ひとりにしておいた事を後悔しつつ、あわてて抱いた。
少しの間、そのまま私の腕に身をゆだねていたが、静かにうずくまる。
床暖も温かいし、私達の傍が良いのね・・・?
そっと私がベッドに戻ってから直ぐのこと、また彼女がもぞもぞ立ち上がった。
「レトちゃん、静かにねんねしていないと・・・」と言いながら見ると、私の目をじーっと見、そして、私から目を離さないで、振り返り振り返り身をよじるようにして部屋を出て行こうとする・・・・。
「レトちゃん、どうしたの?! 動いちゃだめよ・・」と言いながらベッドを飛び降り、私も彼女の後を追う。
あぁ・・・、今日はもう書けない・・・。
あの黒いレトちゃんの訴えるような眼を思い出したら、胸が張り裂けそうだ・・・。
真夜中の暗い部屋・・・、テレビのきらびやかな舞姫達を映し出す照明だけが赤く、青く、目まぐるしく部屋を照らしている風景と、振り返るレトの目・・・。
駄目だ・・。今日はこれで止めておこう。
続きは明日の明るい陽の中で書こう。
今の私はずぶ濡れ・・・・。